2015年ごろから、物を持たないシンプルな生活を実践する「ミニマリスト」という言葉が聞かれるようになったり、カリスマブロガーのイケダハヤトさんが高知県へ「地方移住」するなど、新しい暮らしのあり方が注目されています。
なかでも、話題になっているのは、東京と地方を行き来する「二拠点生活」。仕事のある平日は東京で過ごし、休日は自然豊かな環境でゆっくる羽を伸ばすという新たな移住スタイルです。メディアでは、デュアルライフというオシャかっこいい呼ばれ方も。
そんな二拠点生活に興味はあるけれど、仕事との両立や金銭面・人間関係などが不安……という方も少なくないのでは。そこで、2016年11月に二拠点生活ユニット「一男二女」を結成し、実際に二拠点生活をしているメンバーのカズキタさんとエリキさんを取材。
「なぜに拠点生活をはじめたのか?」「なぜユニットを組んだのか?」「二拠点生活の魅力とは?」など、リアルなライフスタイルについて話を伺いました。
目次
二拠点ユニット「一男二女」のプロフィール
カズキタさん(30)長男 写真中央
茨城県出身・東京都在住
職業はITメーカーのデザイナー
現在の家賃は、三軒茶屋のシェアハウスで月6万5千円
おまみさん(29)長女 写真右
長野県出身・長野県内のアパートに在住
職業は小学校の教員
長野県内で二拠点生活している
エリキさん(26)次女 写真左
静岡県出身・東京都在住
職業は、ガス会社の事務員
赤羽の親せき宅に居候しており、家賃は月3万円
※おまみさんは長野在住のため、今回はカズキタさん・エリキさんのお二人に取材をしました。
出会いは、一人旅で訪れた「ゲストハウス」
――まずは、三人の出会いから教えてください。
エリキ「1年ほど前に、長野県大町市にある『カナメ』というゲストハウスで知り合いました。ゲストハウスに宿泊する人は、外国人観光客か一人旅ほとんどなんです。私たちは、もちろん後者の集まり。
全員が初対面でしたが、リビングが共有スペースになっていたので、そこで交流して仲良くなりました。
話をしているうちに三人とも好きな場所や旅の楽しみ方が似ていることが判明! 意気投合し、それから色々なゲストハウスをいっしょに巡るようになったんです。」
カズキタ「自然と長野県内にあるゲストハウスに泊まること増えてきて。」
エリキ「月に3回は、長野のゲストハウスへ泊まりに行ってたよね。長野は東京からそれほど遠くないわりに、大自然が広がってるんです。古民家も多いので、『古き良き日本』という感じで、本当にリラックスできますね。」
カズキタ「『こんなに長野へ来てるなら、もう住んじゃう?』という話になり、二拠点ユニット『一男二女』を結成しました。そして、2016年の11月にシェアハウス『metome』の一室を三人で借りることになったんです。」
男女三人で一室借りるのは気まずいから「きょうだい」設定に
――ユニット単位での活動について詳しく教えてください
カズキタ「まず、男女三人が部屋一室を借りるのは、なんか気まずいねってことになり…(笑)。周りの人に説明するのも、ちょっとややこしかったので、『きょうだい』という設定をつくりました。」
エリキ「だから、名刺もカズキタさんは『長男』・おまみは『長女』・わたしは『次女』と書いてあります。実際に、きょうだいのような関係なんですよ。決定権もカズキタさん→おまみ→わたしの順です(笑)。」
カズキタ「あと、実際に部屋を借りてみると、三人で一部屋がちょうどいいかもしれないなと思いました。というのも、三人が顔を合わせることってほとんどないんです。」
エリキ「おまみは、自宅からシェアハウスまで近いから平日に泊まっているし、わたしとカズキタさんは予定のない土日に泊まるから、入れ違いになるんです。」
カズキタ「『男女三人で一室を借りている』と言っても、実質はひとり暮らし。ただ、物を共有できるから節約できるし、たまに顔を合わせるのも楽しいしいから、ユニットを組んで良かったなと思います。」
地元の方との交流が生活の一部になっている
――実際に、長野での暮らしはいかがですか?
カズキタ「そうですね。そもそもシェアハウス『metome』は、何度か宿泊したことがあって、オーナーさんや地元の若者、ほかの移住者とも仲が良かったんです。だから、わりとスッと馴染めました。」
エリキ「長野には東京からの移住者が多いので、地元の受け入れ態勢ができてるんですよ。」
カズキタ「そうだね。地元の人とのコミュニケーションは、二拠点の楽しみの一つ。長野へ行くたびに、友だちや知り合いが増えるんです。それに、東京から来ていると言うと、いろいろと気にかけてくれるんですよ。
たとえば、地元の人と飲んでいるときに『車がないから移動が大変』という話をポロッとしたら『うちに使ってない車があるから』ってタダで譲ってくれたんです。
車種がモコなので、『モコ太郎』と命名しました(笑)。
あとこれは偶然なんですけど、モコ太郎を譲ってもらったタイミングで、マイカーが壊れてしまった友人がいまして。だから、僕たちが乗らないときにモコ太郎を貸してあげることにしたんです。
その代わりガソリン補充と洗車お願いしていて。だから、維持費をうまく節約しています。」
エリキ「近所の農家の方に、野菜をもらうこともありますし、もはや地元の方との交流が生活の一部になっているんです。こういった経験は、東京ではほとんどないと思うので、新鮮で楽しいですね。」
「お金」「気候」「仕事」の問題は、どう対応する?
ーー二拠点生活をする際に、不安な面はありましたか?
エリキ「やっぱりお金ですかね。シェアハウスの一ヶ月の家賃は3万円。それを三人で割って、ひとり1万円ずつ負担しています。家賃は安いですが、交通費はそれなりにかかっちゃいますから。」
カズキタ「二拠点生活をするなら、ある程度お金に余裕がなくちゃ難しいと思う。最低限、東京の家賃・拠点先の家賃・交通費を毎月ちゃんと払えるくらいないと厳しい。まぁ、僕もお金なくて困ってるんですけど…(笑)。」
エリキ「おまみは実家暮らし・カズキタさんはシェアハウス・わたしは親戚宅と、もう一つの拠点地の家賃を抑えられる環境にいるから、お金の問題はそこまで起きてないですね。あとは、気候の問題があります。」
カズキタ「日曜日に長野で大雪が降って、交通機関がすべて麻痺してしまった時があったんです。月曜日に会社へ行かなくてはならなかったのに、どうしても始業時間に間に合わなくて……。いやぁ…完全に長野の気候を舐めてました(笑)。
幸いデザイナーという職業柄、パソコンひとつあれば仕事はできるので、その日はパソコンで作業しつつ、インフラの復旧を待って出社しました。」
エリキ「カズキタさんのように、場所を選ばない職業ならそれほど問題はなさそう。ただ、事務職をしているわたしのように、作業場が固定している人は、気候の面でリスキー。
万が一の時に備えて、職場の人に『二拠点生活をしている』と伝えて理解を得ておく必要があると思います。」
二拠点生活を叶えるポイントは?
ーー最後に、二拠点生活をしてみたい!という人に向けて、アドバイスをお願いします。
カズキタ「住みたいと思った地域には、事前に何回か泊まりに行った方がいいと思います。東京とは、気候も生活環境も全然ちがうから、自分の肌に合うかを確認しておく必要がありますね。
あとはひとりでも複数でも、まずは試しに短期間住んでみるのがおすすめ。一ヶ月ほど住めば、人間関係やお金の使い方やライフサイクルなどが見えてくるはず。」
エリキ「仕事でもプライベートでも自分の中で、モヤモヤしたものを持っている人は、二拠点生活で気持ちをリセットしてみたらいいんじゃないかな。わたしがそうだったので。
ただし、二拠点生活先でシェア生活をするなら、テラスハウスのような恋愛要素を求めるのはやめたほうがいい(笑)。純粋に旅を楽しみたかったり、解放された時間を満喫したかったりする人が多いから、婚活目的ならいずれ独りぼっちになっちゃいます。」
東京のせわしない生活や仕事に疲れて「消耗しているな……」と思ったら、田舎でのんびりと暮らす「二拠点生活」を考えてみてはいかがでしょうか。