元プロ野球選手のお店訪問~元千葉ロッテ・藤田宗一×グラゼニ女子・日里麻美~

元プロ野球選手のセカンドキャリアには、さまざまな道があります。野球の監督や解説者、タレント活動などが挙げられますが、なかでも多いのは居酒屋やバーなどの飲食店の経営

現役時代は、試合やキャンプなどで、全国各地を飛び回っていた元選手たち――日本中の美味しい料理に出会ったであろう彼らがオーナーのお店なら、味は折り紙付きなはず。ということで、この企画では、元プロ野球選手が経営している飲食店を取材。本選手本人を直撃して、お店のことはもちろん、現役時代の裏話まで根掘り葉掘り聞いちゃいます!

元プロ野球選手・藤田宗一さんが経営する「和牛ホルモン店  宗一」

今回取材させていただいたのは、赤坂にある「和牛ホルモン店 宗一」でオーナーを務める藤田宗一さん。

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藤田宗一(ふじたそういち)
1972年10月17日生まれ。京都出身の44歳。島原中央高校から西濃運輸を経て、1997年にドラフト3位で千葉ロッテに入団。2005年、千葉ロッテ31年ぶりのリーグ優勝に貢献。2006年にはWBC日本代表にも選ばれ、優勝メンバーに。その後、巨人・ソフトバンクと渡り歩き、BCリーグ群馬でもプレー。全てリリーフとして、プロ通算600試合に登板しました。

2012年に引退後、2013年に「豚焼 繁」をオープン。今年11月にメインを豚から牛にシフトし、店内も改装したとのこと。さっそく、リニューアルしたばかりのお店でお話を伺いました。

スペシャルインタビュアーは、グラゼニ女子の日里麻美さん

さて、今回はスペシャルゲストとして、野球大好きタレントの日里麻美さんにインタビューを担当していただきました!

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日里麻美(ひさとあさみ)
岡山県出身。元イルカの調教師という経歴を持ちつつ、現在女優業をやりながらプロレス活動も行なっています。その他、プロ野球マンガ「グラゼニ」のPRユニット「グラゼニ女子」としても活躍。球界&漫画界を盛り上げるために、日々邁進中!

なぜか囚われスタイルで登場する藤田さん

インタビューを始めようとしたら「僕はここでイイっすよ」と店の端っこに座ろうとする藤田さん(プロ野球界のスーパースターなのに!)。

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スタッフが「いやいや、もう少し近くに来ていただいても大丈夫ですよ」と伝えると……

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すこし近づいてくれました。お茶目すぎワロタ。

藤田「オープンから1~2年は、キッチン・注文・電話番、すべて自分が対応していました」

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日里:すごく有名な方なのに、謙虚な姿勢で驚きました(笑)。

藤田:いやいや。こういうインタビューにあんまり慣れてなくて。

日里:わたしも憧れの藤田さんにお会いできて、とても緊張しています。お店のことやプロ野球のことなどいろいろ聞かせてください。まず、お店にいらっしゃるお客さんは、やっぱり野球関係者が多いんですか?

藤田:8割くらいは野球ファンの方ですね。あとは、赤坂にはオフィスが多いので、仕事帰りのサラリーマンの方が仕事帰りに経ち寄ってくれます。

日里:現役のプロ野球選手も来られるんですか?

藤田:来ますね。東京ドームが近いので、練習や試合帰りの巨人選手がよく来てくれるんです。みんな、普通にカウンターに座って飯食ってますよ。ほかのお客さんは「まさか、巨人の選手がカウンターに座っているなんて」と思っているみたいで、意外と気づかないんですよね。

もう引退していますが、元千葉ロッテの小林雅英さんも常連で、よく食べに来てくれます。

日里:お店がリニューアルしたとのことですが、どういったきっかけなんですか?

藤田:もともと、このお店はホールもキッチンも電話の予約も、全部僕が担当していたんです。でも、周りから「そろそろ野球の勉強をしなさい」という声をいただきまして(笑)、来年からは野球関係の仕事を増やそうと思ってまして。

だから、新しく職人さんやスタッフを雇うことにしたんです。つまり、お店が新しい体制になるタイミングということもあり、リニューアルすることにしました。

日里:そうですよね! 藤田さんが引退後に野球関係の仕事をしていないのは、ファンとしても不思議に思っていました。

藤田:お店のオープン当初から、飲食と野球の仕事を両立するのは難しいだろうなと思っていました。だから、きちんと修行をして軌道に乗ってから、野球の仕事を再開しようと決めていたんです。

日里:なるほど。それにしても、ご本人がお店のすべての業務を担当していたのはビックリですね。

藤田:よく驚かれます。オープンしたばかりのころは、休業日以外はずっとお店にいましたね。電話でよく「今日、藤田宗一さんいますか?」とお問い合わせをいただくんですが、もちろん僕が電話を取っていたので「あ、僕ですけど」と答えることがしょっちゅう(笑)。

藤田「来年からは解説や千葉ロッテ関係の仕事も増やす予定なんです」

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人気メニューの「赤城はらみ鶏」(890円)。ほおばると、柔らかくジューシーな味わいが口いっぱいに広がります。美味!

日里:では来年以降は、あまりお店に立つことはないんですか?

藤田:いや、土日に野球の仕事をする予定なので、平日は立っていると思います。

日里:これからも店舗でお会いできる機会はあるんですね。野球関係は、どういう仕事が入る予定なんですか?

藤田:今は解説の話がきています。あとは千葉ロッテ関係の話も進んでいて。

日里:おおー! ワクワクするような情報を聞けてうれしい。めっちゃ楽しみです!

日里:そういえば、野球選手ってよく焼肉を食べているイメージがあるんですけど、やっぱり現役時代から飲食店を始めるなら「肉がいい」という気持ちはあったんですか?

藤田:僕の場合は、あんまりこだわりがなかったですね。実は、最初は串焼き屋をしたかったんです。自分がカウンターに立って、10席くらいのところでこじんまりと経営する感じ。

正直、そこまで儲けなくても、安定した収入さえあればいいかなと思ってました。やっぱり、家族がいるので、ドカンと儲けるよりも最低限の収入を確保できるような営業をしたかった。

ただ、知り合いの伝で豚を一頭買いできるルートができまして、だったら、大きめの店舗にしたいなと思ったんです。あれよあれよといううちに、気がついたら大きめのお店になっていました(笑)。

藤田「お店が赤字続きだったときは、『とりあえずがんばろう』と自分に言い聞かせましたね」

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日里:お店を開くのに一番大変だったことは何ですか?

藤田:やっぱりお金ですね。右も左もわからない素人から店を始めたので、一年間は様子見しようと決めてたんです。だから、その期間はずっと赤字でした。

日里:赤字が続くと、精神的に参ってしまうこともあると思うんですが、そういう時はどうやって乗り越えたのでしょうか?

藤田:「とりあえずがんばろう」という気持ちですね(笑)。野球関係者も来てくれるので、正直、お客さんがいない状態はあんまりなかったんです。ただ、逆に一気にお客さんが来てしまうと、スタッフが少なく、メニューを出すのが遅れてしまうなど迷惑をかけてしまうことがありました。

お客さんはたくさん来てほしいけど、それだとお店が回らないときが一番しんどかった。というときは「とりあえずがんばろう」精神で乗り越えましたね。

日里:特に営業をしているわけではなく、自然と関係者の方がいらっしゃるんですか?

藤田:そうですね。電話で「今から行ってもいい?」と連絡をくれますね。

日里:飲食店を経営している元プロ野球選手の方からアドバイスをもらったりしたんですか?

藤田:愛知で「炭火焼肉 ひろむ」というお店をしている元中日・元千葉ロッテ選手の小島弘務(こじまひろむ)さんにはいろいろと教えてもらいました。

藤田「元プロ野球選手はお金ないッスよ」

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日里:お店が好調のようですし、2店舗目・3店舗目の出店予定はあるんですか?

藤田:いや~良い質問ですね(笑)。次のお店も出したいと思ってるんですけど、お店を手伝ってくれたり、引き継いでくれる人を見つけるのがなかなか大変で。

日里:元プロ野球選手の方で、飲食店を始めたいという方もいると思うのですが、そういった方と一緒にやるのは難しいんですか?

藤田:やりたいという人はいるけど、資金をどう調達するかですよね。

日里:でも、野球選手の方ってお金持ちのイメージめちゃくちゃあります。蓄えもそれなりにあると思うんですけど。

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藤田:いやいや(笑)。野球選手って、お金持ってないですよ。

日里:え? でも現役時代には、わたしたちのレベルをはるかに越えた収入を得ているわけじゃないですか。

藤田:お金を持っていない理由のひとつは税金ですね。あとは”後輩へのおごり”です。年齢が上に行くほど、飲み会などでお金を出さなくてはいけない。プロ野球は、先輩がおごるのが暗黙の了解なんですよ。

日里:‟どこのチームが”、というのはなくて‟プロ野球界全体が”、ということですか?

藤田:そう。だから、後輩の方が年俸は高いけど、先輩が全額出すパターンも全然あります。一回の食事で10万~20万は普通に飛ぶんですよ。

日里:ええ! 結構えぐいですね…。もしおごらなかったり、ケチをしたりしたら、身内で評価が下がるんですか?

藤田:どうだろ(笑)。いや意地でも、先輩は後輩に出させないです。ただ、たまに後輩が気を遣って先にお会計を済ませておくパターンはあります。でも、お店を出たらやっぱり先輩がお金を渡すんですよ。

で、そのままじゃちょっと気まずいから「もう一軒行く?」と言って次の店でも結局、先輩が出すっていう(笑)。

日里:なるほど。そういうことの繰り返しだと、お金を貯めてお店を始めるのは、簡単にできることではないですね。

藤田:そうですね。それに、引退後にお店を始めても、その関係って続くんですよ。やっぱり僕も、後輩の選手がお店に来たらサービスしますし。来てくれるのはすごいうれしいですけど、正直儲けは減ってしまう。でも、そこはルールですから、やっぱりサービスしないと

日里:ほかのお店でも同じようなルールがあるんですか?

藤田:そうですね。僕がデーブ大久保さんが経営している「内蔵でーぶ」へ行ったときも、いろいろとサービスしてくれましたね。そういう上下関係の下でできてるんですよ。

日里:じゃあ、後輩の方がドカッとお店に来たら、結構しんどいんですかね?

藤田:いや、でも後輩たちの宣伝効果はすごいある。あいつがTwitterやFacebookでお店を紹介してくれたら、その投稿を見たお客さんも来てくれるので。ギブアンドテイクです

僕の場合、現役時代に奥さんがお金のやりくりをしてくれたから、引退後にお店を出すだけの貯金できてました。本当に、奥さんには頭が上がらないッスよ。

藤田「巨人は、ひげ・茶髪・ロン毛が禁止。でもシーズンオフだけはOKだから、その時期だけみんなチャラくなります(笑)」

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日里:ところで、ずっと気になってたんですけど、現役時代からのおひげは健在なんですね!

藤田:そうですね。たまにアゴだけ生やすパターンもあります。あとカールおじさんバージョンも。

日里:(笑)

藤田:ひげを剃っていたのは、ジャイアンツ時代だけですね。

日里:そっか。ジャイアンツは厳しいですもんね。

藤田:ひげ・茶髪・ロン毛は禁止でしたね。でも、シーズンオフのときだけ開放されるから、みんな見た目がチャラくなるんですよ。ちょっと染めたり、ひげ生やしたりしてる。

日里:男子高生みたいですね(笑)

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藤田さんおすすめの雲仙ハム(680円)。肉厚でボリューム満点。ビールがグビグビ進みます。

日里:正直、ジャイアンツはほかの球団に比べて全体的に厳しいんですか?

藤田:ジャイアンツ、というかパリーグとセリーグの違いじゃないですかね。やっぱり、セリーグはメディアに出る機会が多いから周りの目が厳しいんです

日里:プライベートなことも言われるんですか?

藤田:そうですね。逆に、千葉ロッテにいたころは、何にも言われませんでしたから(笑)。

たとえば千葉ロッテ時代は、家の近所にある定食屋にフラっとはいってごはんを食べていても、何も言われなかった。でも、2005年に千葉ロッテが優勝して、さらに2006年にWBCで優勝したあとに、その定食屋に家族で行ったら、すごく指さされました(笑)。そのときに、「もう少し、プロ野球選手だと意識しないといけないな」と思いましたね。

日里:プロ野球の裏側をたくさん聞けて面白いです! プロ野球と飲食業で通ずるものはあるんですか?

藤田:「根性」ですね。飲食は、お客さんが来るか分からなくても、早い時間から仕込んで準備しないといけない。そして、どのタイミングでお客様が来ても、最高の状態でメニューを提供する義務がある。お客様が来店するまでの「待ち」時間をいかに耐えられるかが、飲食店の生き残りを左右すると思います。

プロ野球も、いつ登板してもいいようにアップしておく必要がありますからね。ここぞというときに結果を出せる選手は、「ベンチで待っているとき」も準備は万端なんです。

日里:なるほど。プロ野球選手として大活躍していた藤田さんが、飲食で成功しているのも、持ち前の「根性」あってのものだと実感しました。今日はお忙しいなか、たくさんお話していただき本当にありがとうございます。

藤田さん:いえいえ、またいつでも食べに来てくださいね。

終わりに。

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最後に記念撮影!

店内には、たくさんの選手たちのサインや写真が飾ってありました。野球選手はもちろん、プロレスラーや力士などのものもあり、藤田さんの交流の広さが伺えます。お店に通えば、有名な選手とバッタリ遭遇することがあるかもしれません。

赤坂&東京ドームへ訪れた際は、ぜひ「和牛ホルモン専門店  宗一」に足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

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